top of page

岸野雄一、新宿大歌舞伎「象引」、日藝授業の九龍ジョーという一月前半日記

 気がついてみると、1月はブログを完全休業でした。


 というのはですね。あんなにノリノリだった正月、昇仙峡、弥三郎岳登山のあと一週間目にぎっくり腰、追い打ちをかけるように風邪でもう、仕事をこなすのに精一杯。特に風邪はひどかったですね。もう、咳がけいれんのように繰り出され、苦しいったらなんのって。耳鼻科で咳止めのカフコデを処方してもらったけれど、ほとんど気休め程度。


 ぎっくり腰はいつもの駆け込み寺である、武蔵小山鍼灸接骨院の源先生(天才!)に行ったついでに咳のことを相談したら、「血を取れば一発で治る」っていうんで、手指と胸にシラクというガラスのカップを付けての吸引採血をやったら、黒い血がどばどば。これ、効くんですね。風邪の引きはじめに来てくれたら、もっとラクだったのに、という先生のお言葉。いかに身体関係の駆け込み寺を持っておくか、が、中年からの処世術の根本ではあります。


 さて、1月の発病直前、11日の夜は、岸野雄一君主催のO-WESTでの「OUTONEDISC PRESENTS「FUCK AND THE TOWN」。


 これ、何と入場料が、客が見おわった後料金を決めるオープンプライス方式。テレビやフリーペーパー、そしてインターネット上の表現をはじめとして、コンテンツが無料で当たり前、という時代に、表現とその対価を意識させる、という岸野君らしい意思表明。内容は素晴らしいもので、「腰は調子悪いし、ちょっと顔出して帰ろうか」なーんて思っていたら、結局、一階のフロアで前から七列目ぐらいにセンターで陣取ってかぶりつき状態。いいDJ時と同様、この立ち位置って好きみたいです。

 スタジオボイスの編集者、中矢君に声をかけられ、彼のアナウンスによると、「相対性理論」という次に出てくるバンドが、インディーズながらオリコン・アルバム・チャート25位、タワーレコード・チャートでは1位を記録する人気者らしい。ボーカル(名をやくしまるえつこと言う)はゴスロリ風ファッションの無愛想な不思議ちゃんなのですが、そうするとバックもワンコード、パンクヘタウマ系と思いきや、これがおしゃれで軽やかでなんととってもAORっぽいんでしすよ。


 私は大学時代に車でブライアン・オウガーやスタッフを聞きながら、フューの国分寺ライブなどに通っており、その蝙蝠のようなどっちつかずの嗜好に悩んだものですが、今やそれが何のてらいもなく音楽作りに取り込まれていることに感慨を覚えます。昔は良くも悪くも、かつて音楽は周辺カルチャーと切っても切れない関係だったのですが、もはや、自由にクリエーションの1パーツに成り得るということだよね。「相対性理論」の音楽の不思議な浮遊感とメッセージ性には、やっぱ、彼女のボーカルとそのサウンドね、といったハイブリッドの必然性があったのでしょう。バンドにテクニックがあんまりなくて、音楽に追いついていかない感、もまた、いい感じの味になっているんだよなー。

 DJの七尾旅人は、初DJなんていってたけれど、意外な拾いもので私は一発でファンになりましたよ。間にトークを入れていく、最近、ちょっと局地的リバイバルを見せている、ディスコスタイルで、次々とマッドなファンクをプレイしていきます。映画「ブルーベルベット」のオカマの暴力歌手、マッドプロフェッサーなんかの世界が好きな人ならば、確実にハマる。こりゃ、図らずもニューヨーク・アンダーグラウンド風味。

 岸野さんのWATTS TOWERSは、もう、私にとっての「児童遊園地」。輪郭と精神がはっきりしていて、でも、出てくる乗り物や登場人物はスウィートで楽しく、美しくいというひとつの境地を創り出していますね。最近、とみに子供化している自分、いや、自分だけでない周りの大人たちにとっての「おかあさんといっしょ!」なのだった。なんて言うことを考えていたら、岸野さん、春からNHKの子供番組の音楽をやるそう。やっぱ、最近NHKは良い仕事、しちょります。  そういえば、くだんのオープンプライスのお値段は、7000円と付けさせていただきました。


 1月14日は、母親と国立劇場で新春大歌舞伎。

 とはいっても、母親、年始に起こった家の水漏れ大修理で工事立ち会いをしなければならず、欠席。トラで母友人のA夫人登場。織りのキモノ姿がよく似合ってました。見所はなんといっても、団十郎の白血病からの復帰第一作で、歌舞伎十八番の「象引き」。あんまり、上演されない演目ですが、神社の初詣感があるいい演目。「楼門五三の桐」と同じく、一発芸のパワフルで呪術的な魅力に満ちていて、歌舞伎が江戸時代に果たしていたエンターテイメントの特質が理解できる一作でもあります。私も、先代の片岡仁左右衛門が最晩年に演じたそれを今でも脳が忘れていない。そんな、根源的な芸能のかたちがあるのだと思います。 今、お笑い界で頻発している”一発芸”をなぜ、私たちは好むのか、ということのひとつの答えがあるのかも。

 1月17日は、美人寿司インしりあがり寿プレゼンツ(有)さるハゲロックフェス09。

 しりあがり寿さんの事務所は毎年、オモロイ忘年会をやっていますが、それが本年はフェスとして、新宿ロフトにお目見え。で、お誘いを受けて、ヨロコンデ、美人寿司参上。いやー、久々の出動、しかも、お腹を空かせたバンド野郎どもが集う、というので、量産体制で築地買い出し。しかし、こんなときに適当なお値段のマグロがなく、ななんと、キロ7千円クラスを買うハメに。今日の客筋から言うと、多分、回転寿司愛好者の若者が多いだけに、もはや「ボランティアでグルメ教育だ」の心意気ですぜ! 

 しりあがりさん周辺のアマバンが集結したというのだけれど、みんな、アイディアがあって面白い。ニューウェーブ体験者は今や立派な中年なわけで、それでも音楽をやり続けていることは素晴らしいことっす。そういえば、野宮真貴嬢とノエミ嬢とチェリーボム・バンドをやるという話が本当にありまして、来年のさるフェスは寿司と同時にバンドで出場要請をしておきました。

 

1月20日は日大藝術学部の本年度最後の授業。


 久々のゲストは、ライターの九龍ジョー氏。この方、実は某出版社のプロパー編集者でもあり、彼がかつて編集していた、実話雑誌、マッドマックスに惚れ込んだあまりのご出演要請。このマッドマックス、何が凄いかといえば、「ヤクザの組員が愛人と全裸でスカイダイビング」曰く、空翔る愛(笑)、こんなバカな特集をこれまた、AV界の金満家のお金で実行しちゃうピカレスクぶりが凄い人。彼が編集した雨宮処凛著「生きさせろ!」は、今の派遣問題の世論形成の大元をつくった好著でもあります。学生たちには彼の「世の中に風穴を開けることの深い欲望」がどう伝わったのだろうか? 現代美術家、チンポムの「ピカ」事件についても大いに語っていただきました。

 

 一月前編終わり。

閲覧数:6回0件のコメント
bottom of page