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「男女公論」NY出張報告編その2 ABTプリンシパル、デヴィッド・ホールバーグとの再会とリハ見学

更新日:2020年5月8日

 NY滞在中、もうひとつのハイライトは、アメリカンバレエシアター(ABT)のプリンシパル、デヴィッド・ホールバーグ(David Hallberg)がちょうどその時、NYにいて、再会とともに、バレエファン垂涎の彼のリハーサルを観に行けた事でした。

 彼と私の出会いは、過去ブログ&ツイッターに書いたので読んでいただくとして、バレエに疎いムキに彼のステイタスを説明すると、サッカー界でいえば、レアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウドのごときの人といっていい(自信無し)。要するに一流チームの世界的なスターなのですが、この人、舞台で華麗な容姿と技術をさんざん見せつけた後に、五反田のオヤジ居酒屋で焼き鳥&中ジョッキの「ふ~。俺って、この一杯のために生きてるわ」(超訳)という憂いを惜しげも無くさらす事ができる逸材と言えます。


 教授とのディナー後、彼のチェルシーにあるお宅を訪問。


 わりと新しめのモダンアパートで、中は趣味よくリノベーションされていて、カーサ・ブルータス風。旅公演が多い人なので、モノは少ないだろうと思っていましたが、写真集、本などがインテリア仕様ではなくて、結構たくさんある。ページを伏せて、村上春樹の「ノルウェイの森」があったのは、私に対するプレゼンテーションかと思いましたが、ウォルフガング・ティルマンス、ナン・ゴールディンの魅力について熱く語る様子は、日本のサブカル編集者男子の肌合いと同義。しかし、ディヴッドの方は、それに加えてバレエが踊れます。それも、世界のトップレベルで!


 NYファッションインスティテュートに通うメガネ君(母ちゃんが、コムデギャルソンファンというファッションエリート)も先客にいて、手土産ロゼシャンパンを開けて、ご歓談。私がこの前、日本のバレエファンの底辺の厚さを示す証左として、プレゼントした、山岸凉子の『テレプシコーラ』と萩尾望都の『フラワーフェスティバル』を彼がきちんと話のネタに用意してきたのには、ちょっと感激です。(逆の立場の場合、私はこういう細やかな心遣いはしないなあ、と我が身を反省)


 関係ないけれど、『フラワーフェスティバル』のサブキャラ、金髪ロン毛のリュスは、デヴィッドとも言える。クラシックバレエの人だけれど、演技派でコンテンポラリーにも積極的の理論派、という感じがさ。そして、ハローのHug&Kissのたびに感じるのだけれど、この男本当に筋肉が柔らかい。これだから、怪我も無く踊り続けられるのです。


 ブロードウェイと19stの角にある映画館の下、ABTの事務所兼リハスタに翌日出向きました。狭いバックステージのような廊下を、稽古着姿のABTのダンサーたちが行き来する様子は、”美男美女だけしか生息しない惑星”のようです。


 鏡ばりのレッスン室には、アップライトピアノが置いてあって、中年男性の伴奏者が伴奏をつけていきます。レッスン課題はバランシン。相方はアジア人とのハーフのまだまだ初々しい女性ダンサー。往年の人気モデル、ティナ・ラッツに激似。名前を失念してしまったのですが、彼女(ティナと仮に呼ぶ)デヴィッドのアーダジオの練習が始まりました。


 レッスンの眼目は、二人のタイミングと表現の細かいダメ出し。バランシン振り付けは、簡単そうに見えて実はものすごくダンサーに負担がかかるものとは知っていましたが、今回はまさにその神髄を見た感じです。曲のテンポが早くないので、エイやっとノリでポーズを決める事はできなくて、回転したり、ジャンプしたりするところが正確に音楽のフレーズに沿ってなければいけないという、”耐える力”の発揮。その運動量がいかにもの凄いかは、ティナちゃんがブレイクのたびにハアハアするその呼気の激しさで十二分に想像できます。


 一方、ディビッドはさすがにその黄金の脚線美はもとより、練習といえども、あの情感の要となる目力と表情に手抜かりはなく、ティナのためにタイミングを合わせていきます。興味深かったのが、彼が何度も何度も微細に鏡に映る自分のポーズのチェックをしていたこと。ホートレートなどで、自分が被写体になると理解できるのですが、ほんの数センチ顔の角度が違っても、もうその印象は違ってくる。デビッドのそれは、完璧な形を目から脳に叩き込んで、体に覚えさせているような、そんな時間に思えました。


 また、コーチが凄いんですよ。


 彼女はもう現役を離れているのですが(紹介されたけど、名前失念)、コーチとして要になっていて、ティナにダメ出しをする時に自分でお手本を見せる。と、同じ振り付けのところなのに、圧倒的にコーチの方がいいのです。コーデュロイのパンツにスケッチャーの厚底靴でバンバン回転するのにも驚いたけど。


 後でデビッドに話を聞くと、やっぱりティナ嬢はまだ若くて経験が無くて、コールド(群舞)から抜擢されたばかりらしい。しかし、同行の望月君が激しく反応していたように、笑顔が愛らしい小動物みたいな森ガールで、くるみ割りのクララとかがバッチリ似合いそう。


 一時間のレッスン後に、デビッド行きつけのイタリアンカフェレストランに直行。


 MOMAのカフェでテロリズムに近い不味いパスタで懲りていただけに、ここのパスタは美味しかった。デビッド、もちろんYMOも知っていて、教授のストーンでのギグにも興味津々でしたが、なんと翌日は故郷フェニックスの高校の「朝食会」たるイベントの主賓に招待されているということで、涙を飲んでいました。


 そのパンフ、見せてもらったけれど、高校生時分の彼は、もう本当に女の子みたいにカワイイ。彼にはお兄ちゃんがいるのですが、そちらの方は典型的なマッチョ気質に育っていて、高校生の時、バレエと同時にレイヴカルチャーにもどっぷりハマって、裾広がりのレイヴパンツにマニキュアをつけてクラブ活動にいそしむ彼とは水と油だったそう。しかし、この男、バレエに飽き足らず、レイヴァーだったのか。して、どちらにせよ、踊り好き。あっ、重要な事を聞き忘れた。ダンスと言えば、もうひとつの雄、黒系のブレイクダンスには行かなかったのはなぜか。答えはすでにわかっていますが、フェニックスという地方都市での、90年代のダンスカルチャーの現場がどうなっていたのか非常に興味があります。


 この日は、そこからブルックリンに行くはずが、いったん、ホテルに戻った瞬間に爆睡。この夜、デビッドの同僚のお別れ会流れに合流するかな、みたいな話だったのですが、体の方がそれどころじゃなかった、というわけです。


 ホント、東京→NYの時差は猛悪で、教授のマネージャー、空さんの話によると「打ち合わせディナー最中、食べながら寝ちゃう人もいます」とのこと。いやいや、冗談ではなく、心から同情いたしますです。はい。


 ちなみにデビッド・ホールバーグが十八番の「ロミオとジュリエット」を踊る日本公演は、7/28@東京文化会館です。



ちなみに、この方



そんで、こんな仲。けっこうオデコっすなー。



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