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執筆者の写真湯山玲子

夏の思いで vol.2曽根裕、エドゥアルド・サラビア、坂本龍一叙勲、小松弥助の寿司、よし村、メシアンの鳥のカタログ


 そーいえば、こんなことがあった今年の夏。現代美術家の曽根裕から急に、ロスから国際電話があって、「バンドやるから、ゆやまちゃん、ドラム、よろしく。魔神さんもギターよろしく」魔神って、夫のことなんですけどね。なんでも、彼が中国の制作工房に行く前に東京で知り合いのアーティストがレクチャーするんで、そのアトラクションにバンドを急遽やることになったのだそう。スネアとハイハットだけで間に合わせるかな、と思っていたのですが、前日から妙に盛り上がってしまい、最近とんと発揮していない、怒濤の現場手配能力を発揮して、ドラムセットを借りだして、青山の国連大学内にあるtokyo wander siteにゴー。ええ、やりましたよ、ピンクフロイドにプルースにボサノバに・・・・・。音をあまり出しちゃ行けないっていうので、ワイヤーブラシで叩いていたら、ものすごーく腕が疲れましたですよ。しかし、突然のピンクフロイドでしかも。あのドラムって、もの凄く"間"があるんですよ。ちょっと、馬鹿か、と思われるギリギリなんですが、当然、この日のアタシの演奏はバカに転び切りましたぜ。かーんかーんというシンバルのなんと間抜けだったことか。フリーセッションに近かったので、観客のひとりがボサでパーカッションを買って出てくれたのですが、このヒトがものすごくリズム音痴でしかも音がでかいと来ている。もう、必死でリズムキープしましたが、なんといいますか、これ、酔っぱらいながらクレペリン式計算やるがごとくの大変さではありましたなー。


●●●日本メキシコ交流400周年記念 アーティスト・トーク&音楽セッション エドゥアルド・サラビア&曽根裕 7月11日(土)


 坂本龍一さんがフランスから、芸術文化勲章オフィシエ(Officier)を受勲されるというので、お招きを受け、フランス大使公邸に行って来ました。この間は、モレシャンさんだし、今年はホント、よくここにお邪魔しております。そういえば、スーツ姿の教授というのは、とっても珍しいかも。役者さんのような華やいだ雰囲気になりますね。あっ、そういえば、彼は堂々、映画俳優の経験があるのでした。戦メリのヨノイ、ですね。スピーチでは、幻冬社社長の見城さんが、ミシュランを引き合いに、対仏辛口のナイスなスピーチをブチかましており、あっぱれ。こんぐらいやっとかないと、あのフランスのレディキュールな文化には拮抗できませんですとも!


●●●坂本龍一氏芸術文化勲章オフィシエ(Officier)受勲式@フランス大使館   7月16日


https://www.youtube.com/watch?v=V4FUYpfZM1c&gl=JP

 と、会半ばで中座して、一路羽田から最終便で金沢に。瀬古篤子さんの誘いで、念願の「小松弥助」の寿司を食べにいくという、念願のツアーです。すべての寿司グルメにおける"生ける伝説"のたたずまいは、はっきり言って"その辺の駅前にある、飲み屋代わりの街場寿司屋"。アパホテルの一階に、ものすごーく、フツーの感じで在るのでした。

 入ってみたら、色つやのいい大将がカウンターでトントンとネギトロ作業に熱中しているのに遭遇。もうこちらとしては、気合い充分で大将に対峙したのに、そのトントン状態があまりにも、自由奔放。ネギトロはまな板中に乱れ飛んで、頓着の無いノイズ状態なんですよ。そのあとにもちろん、まな板はサッと拭かれるんですが、そういえば、つけ台周辺も、いろんなたれやトッピングの皿が並んでおいてあり、親しみやすーいルックス。  東京での一流寿司屋がすきやばし次郎をはじめとして、江戸前の寿司美学を「握る所作」の美しさまで端正に追求しているのに対して、こちらはその様子がみじんもない。とここまでくればお分かりのように、すでにストーリーは、スターウォーズのヨーダやクライング・フリーマンの百八龍の頭目と同様、「そうは見えないのに凄腕」という予感にワクワクしていたのですが、果たして、それはイカに仕事をする段になって、まずは発揮されたのでした。出てきたのは赤イカの一枚。すると、大将はこともなげにその薄いイカに水平に包丁を入れて、なななななんと、ソレを三枚に下ろし、重ねて切ると見事なまでのイカの糸作りが出来上がるのです。それは握る段になると、よじれを加えられ、口の中でほどけ、切り口の鋭角と身のねっとりとした食感と甘さと端正な酢飯とが合わさって、私は一発で昇天。トロも凄かったですね。斬りつけ方と隠し包丁がヤバい。どう、寿司が口の中で噛み砕かれ味わわれていくのか、ということをものすごく知っている寿司ともいえるかも。  握る所作も個性的。とにかくこの大将、身体をしょっちゅうスピーディーに動かしています。その動作の間に電光石火のように寿司を握りのですが、そのとき癖のようにきゅっと右肩腕を上げるのです。そういえば、ベジャールの振り付けにそういうスタイルがあったな、などと考えました。自由への希求と"目的のための最速最善スタイル"。小松弥助とモーリス・ベジャールの組み合わせは悪くないわね。  このときに同行したメンバーのひとり、藤澤龍一さんは、小松弥助のかねてからのファン。このときのために、"マイ古備前"を持ち込み、日本酒を飲んでいる。「本当に味が違うのよ!」というので店のガラス杯と比べてみたら、本当に古備前の方が甘くまろやかになる。これ。プラシーボではありません。世の中にはまだまだ、面白いことがある。

 寿司の後は、骨董屋めぐり。美人寿司用に朱のうるしのおひつと小皿を購入。夜は夜とて、割烹の「よし村」へ。ここも秀逸。久々のてんぶらづくし。寿司もいいけれど、実は魚の最もうまい調理法はこっちじゃないか?という想いも私にはあります。今が季節の毛蟹に昇天。郷土料理のじぶ煮は、本物をやっと食べることができました。出汁を濃厚に食べるようなスープ、といえるでしょう。

 翌日は、金沢21世紀美術館にて、メシアンの「鳥のカタログ」。楽譜が席においてあり、譜面をおいつつも、ピアノを愉しむ。美術館の中のピアノ、というのは、イイものですなー。そう思うのは、ムソルグスキーの「展覧会の絵」からのイメージなのだろうか・・・。展示室には卓球台が一台おかれ、観客がピンポンを始めると、ピンポン球が弾む音が思いがけない音色に変わって空間に響きわたという、一柳慧のアート・ワーク《オープン・ダイアローグ》の一環が、この企画だったのですが、メシアンの原曲目当てだっただけに、それ、とのセッションははっきり言って、キツかったかなぁ。鳥の声(中川賢一のピアノ)を聞きたいのに、(ピンポンと野鳥のサンプリング)がうるさくて聞けない、というフラストレーション(笑)。偶発性とノイズ感覚はこの際、いいから、ピアノに身を委ねたかったですね。それはそうと、企画者の一柳慧氏をお見かけしました。いやー、ヨーコ・オノの前の旦那は白髪痩躯でカッコいいっす!

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